題名
RCNPサイクロトロンの超高品質ビーム(その実践と新しい非線形軌道理論)
英題 Ultra-Precise Beams of RCNP Cyclotron- Practice
and New Non-Linear Orbit Theory
所属機関 大阪大学核物理研究センター
発表者
佐藤 健次
要旨
RCNPでは,リングサイクロトロンの磁場が,コイルの冷却水の温度に敏感に反応して変化することを見出して以来,冷却水の入口温度を制御する機能を付与することにより電磁石の鉄芯温度の安定化に努め,その結果,磁場の長時間高安定を実現した.その時点で,高分解能スペクトログラフGRAND-RAIDENを用いて非弾性散乱の測定を行ったところ,0度方向のスペクトルでハローがほとんど現れないと言う成果を得た.
これに勢いを得て,AVF サイクロトロンの電磁石の鉄芯温度の安定化による磁場の
長時間高安定化に取り組んだ.そのために,等時性磁場分布では不可避の磁場勾配を
相殺するために,局所的な補正コイルを設けたNMR プローブを開発して、高精度で磁場を読み取ることが出来るようにし,また,コイルの冷却水の入口温度が制御出来る
ように、冷却系に手を加えた.
その結果,リングとAVF の両者で磁場の長時間高安定が実現され,そのとき,例えば,400MeVの陽子ビームのエネルギー幅として80keV
が実現され,2x10E-4 のサイク ロトロンとしてはかつてない高分解能が達成された.このビームを,昨春建設されたWSビームラインとGRAND-RAIDENと組み合わせたシステムで,分散整合及び角度分散整合させると,弾性散乱あるいは非弾性散乱のエネルギー幅として16keV
が観測され, 4x10E-5 の,これまた,かつてない高分解能が達成された.
ところで,その一方で,AVF の磁場が2ppmもずれると,80keV であったエネルギー
幅が300keV近くに広がる現象が観測され,しかし,それもAVF の磁場のみを調整すると,元の80keV
に戻る現象に遭遇した.
このような,磁場変化に敏感な現象は,従来の軌道理論では説明が困難と考え,縦方向運動の運動方程式にエネルギーのずれの二乗の項を含む場合の検討を行った.その結果,磁場のずれが正の場合には,その平方根がエネルギーのずれを支配する現象が現れることが分った.即ち,
1ppmの磁場変化が,その平方根の1x10E-3 程度のエネルギー変化を与えることになり,RCNPではそれが観測に掛かったと考えられる.このことは,超高品質ビームを実現するには,磁場が長時間高安定であることを強く要求していることになる.
しかし,その一方で,縦方向運動が非線形運動であることを意味しており,そのため,位相は等時性を保つことはなくなり,従って,高周波位相とエネルギーのずれを
横軸と縦軸にとった縦方向運動の位相空間での粒子の運動は,もやは線形ではなく,加速の途中で歪みが生じることになる.この歪みを補正する方法を考え出し,そのた
めの新しい装置を開発できれば,サイクロトロンでは,さらにエネルギー幅が狭いビー
ム,あるいは,さらに時間幅が狭いビームを実現できる可能性があることになる.
なお,電磁石の鉄芯温度を一定に保つ方法が確立されてきた結果,コイルの電流を
変化させたときに発生する磁場の変化の過渡現象が観測されるようになってきている.
そして,その過渡現象の時定数が長い場合には,コイルの電流を上げ下げすることで,
クリティカル・ダンピングできる場合があり,粒子の変更や加速エネルギーの変更に必要な磁場の設定変更の時間を短縮するのに有効であることが分かりつつある.なお,
この過渡現象は渦電流によるものと考えて良いようである.
要旨:KEKBのビーム軌道の安定化は、Bファクトリー実験の成否のカギを握る重要なテーマである。この安定化のために、High
Energy RingとLow Energy Ringに各々、約450
台のビーム位置モニタが設置され、約30秒毎にビーム軌道が測定され、軌道を補正するオペレーションが行われている。本講演ではビーム位置モニタシステムと軌道補正オペレーションの現状を報告する。
要旨:
UVSOR電子蓄積リングでは昨年ビーム位置検出システムの更新を行った。これにより旧システムでは観測できなかった様々な時間スケールでの変動が観測できるようにな
った。UVSORの軌道変動の現状について紹介し、その原因について若干の考察を行う。またUVSOR自由電子レーザーにおける光共振器長の変動とその対策についても紹介
したい。
要旨:
本年(2001)の1月から、蓄積リングでのサブミクロンの軌道安定化を目指し、「蓄積リングビーム軌道安定化プロジェクト」がスタートした。ビーム軌道安定化には多数の機器やユーティリティシステム、建物等が関与している。サブミクロンの軌道安定化を達成するには、安定化というトータルの視点で、個々の機器やシステムの改善目標並びにタイムスケジュールをコントロールしていくことが極めて重要である。ここでは、中間報告として、蓄積リングの軌道安定度の現状と問題点、現在進められている安定化に向けたSPring-8蓄積リングでの取り組み全般を概説する。
要旨:
PFリングでは65台のBPMと28台の補正電磁石によってVertical方向の軌道フィードバック(制御周期13ms)を行っている。システムの概要と、現在PFで観測されている各種の軌道変動について述べる。
要旨:
本年(2001)の1月から、蓄積リングでのサブミクロンの軌道安定化を目指し、「蓄積リングビーム軌道安定化プロジェクト」がスタートした。ビーム軌道安定化には多数のHIMACでは1994年以来、炭素ビームによるガン治療を続けてきた。その間加速器の小さなトラブルはあったものの、炭素ビームによる治療を中止しなければならない故障は一件も無く、順調にガン治療に利用されている。最初は日本で初めての重イオンでの治療であり、1994年の前期は3人という少人数で始まった。その後、良好な治療である事がだんだんはっきりしてきて、それと共に治療人数も増加し、現在では年間約200人のペースで治療を行っている。又、将来はこの人数をさらに増やす予定である。この講演では多くの患者治療を順調に行うために重要な、専用のガン治療用加速器の性能に関して、HIMACの現状等について述べる。
要旨:
SPring-8蓄積リングBPM信号処理回路高性能化のためのR&Dの中間報告。
まず、現行機における性能を概観し、高性能化の目標およびその達成可能性について述べる。
高性能化の目標としてはサブミクロン、100SPS程度の分解能、測定速度としているが、R&D機におけるプレリミナリー・データからこれらの目標の達成可能性について述べる。
題名
SPring-8 における放射光ビーム高速診断システム
英題 High Speed X-ray
Beam Diagnostic System at SPring-8
所属機関 SPring-8
発表者 青柳秀樹、工藤統吾、佐藤一道、呉樹奎、佐々木茂樹、田中均、石川哲也、北村英男
要旨:
SPring-8の蓄積リング全体において、複数か所で電子ビームと光ビームの動態を高速かつ同時に観測するシステムは重要な役割を果たす。各ビームラインの光位置モニターを単独で使用するのでは、電子ビーム軌道の振動に由来する本来の振動であるのか、モニター自身が原因となる見かけの振動であるのか、判別が困難であった。複数のモニターで放射光ビーム位置の同時計測を行うことにより、ビーム本来の振動を特定することが期待できる。これは、光位置モニターの実効的な精度を引き上げることに相当する。
1999年秋に、PHS(SPring-8構内連絡用)を用いることによりトリガーを所内の任意の場所に伝送し、計測をスタートさせるシステムを構築した。しかしながら、このシステムは、時間分解能がPHSの仕様で決まる約1msecに制限されていることや、常時観測する目的においては操作性に不便な点がみられた。
そこで、2000年冬に、光ケーブルを用いて複数(6本)のビームラインからのアナログ信号を1か所にリアルタイムで伝送するシステムを構築することによって、これらの問題を解決することができた。このシステムは、蓄積リングの電子ビーム位置モニター(rf-BPM)用のシステムに互換性を持たせている。さらに、2001年冬に、4本のビームラインに増設することにより、蓄積リングの状態をより詳しく観測できるようにした。
本ワークショップにおいては、SPring-8 における光ビーム高速診断システムの概要と蓄積リングビーム軌道安定化に向けた今後の課題について述べる。
要旨
SPring-8線型加速器に於いて、シングルショットでデータ取得可能なBPMシス
テムの整備を継続して行なっている。それらは最終的に試作機を含み、44式が据え付
けられる予定である。システムの構成は、BPM本体、信号処理回路、データ収集・制
御系から成る。BPMはストリップライン型で、出力は2856MHzのRF信号が主な成分であ
る。信号処理回路はLOG検波増幅器ICを用いたもので、SバンドのRF信号を検出する。
データ収集・制御系はデジタルデータの入力をVME(コンピュータ)で行う予定であ
る。SPring-8線型加速器のビーム繰り返しは最大で60ppsであるが、全ビームショッ
トデータをデータベースに記録することが可能なシステムとなる予定である。
要旨:
2001年夏にSR収納部床面全周、すべての4極電磁石及び実験ホール床面の3次元の振動測定をおこなった。
その結果を報告する
要旨:
SPring-8蓄積リングの電磁石を強制振動させ、それがビームに与える影響を観測し(予定)、電磁石の振動がビームに与える影響を定量的に求める。振動解析と振動減衰対策のために、実機の電磁石と架台からなるテストベンチを構築したので、その現状と今後の研究テーマについても報告する。
要旨:
加速器と地盤振動(0.1Hz〜100Hz)については、以前から議論の対象になっているが、ゆっくりとした変動(0.1Hz〜0.01Hz以下)に関しては、その影響の捉え方が
加速器物理をやる人毎に異なっているのが現状である。最も古典的な捉え方が、不等沈下
とか、アライメント誤差を含めて完全にランダムな変動といった捉え方が大勢である。
これに対して、地盤変動をブラウン運動的な変動という側面から捉えることが近年試み
られている。このことについて、現象的な観点から話をする。
要旨:
The SPring-8 storage ring has a circumference of about 1.5 kilometers.
The tunnel is constructed on the hard rock or man-made rock to ensure the
stable operation of the light source. The extreme small emittance of the
machine requires that the sources that cause the growth of the emittance
or the drift of the beam obit be eliminated to the utmost. A hydrostatic
leveling system which can measure the level variation of the tunnel floor
on real-time is planed at the SPring-8. Efforts are made to optimize the
system to best fit our purposes. The general concept of this system as
well as the experiments on the system is presented.
要旨:
1〜100Hz領域におけるSPring-8蓄積リングのビーム振動の測定と磁石振動の測定結果について述べ、ビーム振動の原因と振動の抑制法についてのべる。
要旨:
2000.1にSR電磁石電源の電流を高精度で監視するシステムを作成し低周期のドリフト等を観測し、2000.8~2001.5
にかけてQP電源の改造を行った。
要旨:
SPring−8蓄積リング軌道安定化の一環として、冷却水温度変 化に対する軌道の応答を測定し、冷却水温度変動が引き起こす軌道変動の機構を解明した。
所属:
高輝度光科学研究センター(JASRI)ビームライン・技術部門
*高輝度光科学研究センター(JASRI)加速器部門
**日本原子力研究所関西研究所放射光科学研究センター
***理化学研究所ビーム物理工学研究室
要旨:
高速可変偏光アンジュレーターを駆動した時の軌道変動とその抑制方法について述べる。
要旨:
SPring-8蓄積リングにおいて、ビームの位相信号を元にRF基準信号発生器に対してFM変調をかけることにより、2kHz付近のコヒーレントなシンクロトロン振動の振幅をおよそ1/10に抑えることができた。その概要について報告を行う。